いつもと違う目覚めの朝
マッターホルンの先端が徐々に赤く染まるツェルマットの
朝・・いつもなら一緒に暮らしている4頭のセントバーナ
ード犬の鳴き声で目覚める私だがこの日は違った・・
一つ屋根の下で暮らす家主のビクターが、一目散に階段を
下りながら興奮を隠せない表情でカメラを片手に部屋へ飛び
込んできた・・・・・・昨夜の出来事を私へ話しに・・・・
そのカメラを覗いた瞬間・・・私は言葉を失った。
彼の仕事は、マッターホルンを撮り続けるプロカメラ
マン。毎朝元気のよい声で私の名前を呼び、愛犬のセントバ
ーナードを引きつれ、マッターホルンの絶景が一望できる
高台の家から、麓の村まで気持ちよく駆け下りていく、陽気
でカッコいい中年のおっちゃんだ!
夏は、毎朝3,000m以上の展望台へ上り自然の偉大さに感動
をしている人々の笑顔とマッターホルンを絶妙なタイ
ミングで激写する。冬は、スキー板ひとつで白銀の世界へ飛
び出す、プロフェッショナルフォトグラファー。
断崖絶壁から滑り降りるプロスキーヤーやスノーボーダー
の生き様とその瞬間を逃さず彼のカメラに収める。
スイスに暮らすラテン系ポルトガル人
陽気な性格からすると、やはりラテンの国・ポルトガル出身だ
。かれこれ25年はこのマッターホルンの村ツェルマットに
住んでおり、もちろん家族もいる。家族全員ポルトガル人と
いう生粋のラテン系である。なぜ彼が故郷を離れこの街にい
るのか・・『世界中のどの山をみても、これほど興奮と身震い
をするほど表情を変える山は他にない!』と言ってい
た。
奇跡が起きるマッターホルン覚醒の瞬間
タイミングを逃すと決して姿を現さないマッターホルン。悪
天候が続けば1週間以上、一切その表情を見せない山でもあ
る。『奇跡のマッターホルン』を撮るには、季節、気温、天候、
更に月の動きを把握していないと不可能である。ある時は
温度がマイナスまで下がり、手が凍るほどの寒さの中、寝袋を持参で山頂
にて寝泊りをす日もざらではない。全ては、奇跡のマッター
ホルンを撮りたい!その純粋な『情熱』がなければ
この写真はこの世に生まれてこなかっただろう。
ビクター・コルテツ。このカッコいい男は今日もどこかでラ
テンのリズムに合わせて究極の絶景マッターホルンの一枚を
狙っているはずだ。
あの朝私が衝撃を受けた『満月によって照らされた奇跡の夜景』のような、言葉を失うほどのイチゲキ(1枚)を
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Reported by staff